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港入りの葦別け小舟障り多み
今来む我れを淀むと思ふな

歌の意味
港に入る、葦を分けて進む小舟のように、差し障りが多いので遅れているが、すぐに行こうとしている私を、ためらっていると思わないでほしい。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 2998

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 葦を分けて港に入る小舟の進みにくさを序として、差し障りが多くて遅れているだけで、ためらっているのではないと相手に弁明する歌である。左注の或本では下二句を「君に逢はずて年ぞ経にける」とし、逢えないまま年が過ぎた嘆きの歌となっている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「港入りの」は、港に入る、の意で、六音の字余りである。
 二句「葦別け小舟」は、生い茂る葦を分けて進む小舟で、ここまでが進みにくさから「障り多み」を導く序詞となる。
 三句「障り多み」は、差し障りが多いので、の意である。
 四句「今来む我れを」は、すぐに行こうとしている私を、の意である。
 結句「淀むと思ふな」は、ためらっていると思わないでほしい、の意で、本巻の第二千九百八十八首と同じく、通いの滞りを「淀む」と表している。

あしわけをぶね:葦を分けて進む小舟
さはり:差し障り、妨げ
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
石上布留の高橋高々に 妹が待つらむ夜ぞ更けにける
次の歌
水を多み上田に種蒔き稗を多み 選らえし業ぞ我がひとり寝る