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あしひきの山より出づる月待つと
人には言ひて妹待つ我れを

歌の意味
山から出てくる月を待っていると人には言って、実はあの子を待っている私なのに。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3002

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 月の出を待っていると人には言いながら、実は恋人を待っているのだと歌う。人目をはばかる恋の口実と本心とが対比され、ほほえましい情景となっている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
 二句「山より出づる」は、山から昇ってくる、の意である。
 三句「月待つと」は、月を待っていると、の意である。
 四句「人には言ひて」は、人にはそう言って、の意である。
 結句「妹待つ我れを」は、実はあの子を待っている私なのに、の意で、表向きの口実と本心とを対比している。本巻の第三千八首も月を待つことと人を待つこととを重ねている。

あしひき:「山」にかかる枕詞
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
春日野に照れる夕日の外のみに 君を相見て今ぞ悔しき
次の歌
夕月夜暁闇のおほほしく 見し人ゆゑに恋ひわたるかも