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夕月夜暁闇のおほほしく
見し人ゆゑに恋ひわたるかも

歌の意味
夕月の出る夜は明け方が暗いように、ぼんやりとしか見なかった人のために、恋い続けることだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3003

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 夕月の夜の明け方の暗さを序として、ぼんやりとしか見なかった人を恋い続ける心を歌う。はっきり見なかったからこそ募る恋の不思議さが、闇の情景を通して表されている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「夕月夜」は、夕方に月が出ている夜で、そのような夜は明け方には月が沈んで暗いことから「暁闇」にかかる。
 二句「暁闇の」は、夜明け前の暗闇の、の意で、ここまでが「おほほしく」を導く序詞となる。
 三句「おほほしく」は、ぼんやりと、はっきりしないさまで、の意である。
 四句「見し人ゆゑに」は、見た人のために、の意である。
 結句「恋ひわたるかも」は、恋い続けることだ、の意である。

ゆふづくよ:夕方に月が出ている夜
あかときやみ:夜明け前の暗闇
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山より出づる月待つと 人には言ひて妹待つ我れを
次の歌
久方の天つみ空に照る月の 失せなむ日こそ我が恋止まめ