- 歌の意味
-
橡染めの衣をほどいて洗い、また打つという真土山の名のように、もとからなじんだ人には、やはりかなわないことだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 3009
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
新しい相手よりも、古くからなじんだ人がやはりまさると歌う。衣を洗って打ち直すことから真土山を導く序詞が凝った作りで、古い衣を洗い直して着るように、もとの人を見直す心が重ねられているとされる。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「橡の」は、くぬぎの実で染めた衣をいう。
二句「衣解き洗ひ」は、衣をほどいて洗い、の意で、洗った布をまた打つことから「真土(またうち)」にかかる。
三句「真土山」は、大和と紀伊の境にある山で、ここまでが「もと」を導く序詞とされるが、かかり方には諸説がある。本巻の第三千百五十四首にもこの山の名が見える。
四句「本つ人には」は、もとからの人、古くからなじんだ人には、の意である。
結句「なほしかずけり」は、やはりかなわないことだ、の意で、新しい相手よりも古くからの恋人がまさると述べている。
もとつひと:もとからの人、古くからなじんだ人
しく:及ぶ、匹敵する
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
あしひきの山を木高み夕月を いつかと君を待つが苦しさ
- 次の歌
-
佐保川の川波立たず静けくも 君にたぐひて明日さへもがも