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佐保川の川波立たず静けくも
君にたぐひて明日さへもがも

歌の意味
佐保川の川波が立たず静かであるように、穏やかにあなたに寄り添って、明日までもこうしていたいものだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3010

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 波の立たない佐保川の静けさを序として、穏やかに恋人に寄り添い、明日までもこうしていたいと願う女の歌である。静かな川の情景が、満ち足りた逢瀬の安らぎを映している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「佐保川の」は、奈良市の佐保のあたりを流れる川である。
 二句「川波立たず」は、川波が立たず、の意で、ここまでが「静けく」を導く序詞となる。
 三句「静けくも」は、静かに、穏やかに、の意である。
 四句「君にたぐひて」は、あなたに寄り添って、の意である。
 結句「明日さへもがも」は、明日までもこうしていたいものだ、の意で、「もがも」は願望を表す。

たぐふ:寄り添う、連れ立つ
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
橡の衣解き洗ひ真土山 本つ人にはなほしかずけり
次の歌
我妹子に衣春日の宜寸川 よしもあらぬか妹が目を見む