古典和歌stream

君があたり見つつも居らむ生駒山
雲なたなびき雨は降るとも

歌の意味
あなたの住むあたりを眺めていよう。生駒山よ、雲よ、たなびいて隠さないでおくれ。たとえ雨は降っても。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3032

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 恋人の住むあたりを眺め続けたいので、生駒山に雲がたなびいて隠さないでほしいと願う女の歌である。伊勢物語第二十三段にも、四句を「雲な隠しそ」とするほぼ同じ形の歌が見え、後世に広く知られた。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「君があたり」は、あなたの住むあたりを、の意で、六音の字余りである。
 二句「見つつも居らむ」は、眺め続けていよう、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「生駒山」は、大和と河内の境にある山で、呼びかけの対象となっている。
 四句「雲なたなびき」は、雲よたなびかないでおくれ、の意で、「な」は禁止を表す。
 結句「雨は降るとも」は、たとえ雨は降っても、の意である。

あたり:付近、そのあたり
たなびく:雲や霞が横に長く引く
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
天雲のたゆたひやすき心あらば 我れをな頼めそ待たば苦しも
次の歌
なかなかに何か知りけむ我が山に 燃ゆる煙の外に見ましを