古典和歌stream

殺目山行き返り道の朝霞
ほのかにだにや妹に逢はざらむ

歌の意味
殺目山の行き来する道に立つ朝霞のように、ほのかにでさえも、あの子に逢えないのだろうか。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3037

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 殺目山の道に立つ朝霞を序として、ほのかにでさえ恋人に逢えないのかと嘆く歌である。霧に続いて霞を詠み込み、かすかな逢瀬さえ望めない寂しさを表している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「殺目山」は、和歌山県にある山とされる。
 二句「行き返り道の」は、行き来する道の、の意で、八音の字余りである。
 三句「朝霞」は、朝に立つ霞で、ここまでが「ほのかに」を導く序詞となる。
 四句「ほのかにだにや」は、ほのかにでさえも、の意で、「や」は疑問を表し、結句の連体形「む」で結ぶ。
 結句「妹に逢はざらむ」は、あの子に逢えないのだろうか、の意である。

ゆきかへりぢ:行き来する道
あさがすみ:朝に立つ霞
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
思ひ出づる時はすべなみ佐保山に 立つ雨霧の消ぬべく思ほゆ
次の歌
かく恋ひむものと知りせば夕置きて 朝は消ぬる露ならましを