古典和歌stream

浅茅原小野に標結ふ空言も
逢はむと聞こせ恋のなぐさに

歌の意味
浅茅原の野に標を結うような実のない空言でもよいから、逢おうと言っておくれ、恋の慰めとして。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3063

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 たとえ実のない空言でもよいから、逢おうと言ってほしい、恋の慰めにしたいからと願う歌である。左注の或本では下二句を「来むと知らせし君をし待たむ」とし、柿本人麻呂歌集にも結句がわずかに異なる形で見えるとしている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「浅茅原」は、丈の低い茅の生えた野原である。本巻の第三千五十七首も同じ初句で歌い出している。
 二句「小野に標結ふ」は、野に標を結って自分のものとする、の意で、ここまでが中身のないことから「空言」を導く序詞となる。
 三句「空言も」は、実のない言葉でも、の意で、仮名の行では「むなこと」と読む。
 四句「逢はむと聞こせ」は、逢おうと言っておくれ、の意で、「聞こす」は「言ふ」の尊敬語である。
 結句「恋のなぐさに」は、恋の慰めとして、の意である。

むなこと:実のない言葉、うそ
きこす:おっしゃる、「言ふ」の尊敬語
なぐさ:慰め
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
忘れ草垣もしみみに植ゑたれど 醜の醜草なほ恋ひにけり
次の歌
人皆の笠に縫ふといふ有間菅 ありて後にも逢はむとぞ思ふ