- 歌の意味
-
田上山のさな葛が長く延びて後に絡み合うように、このまま時を経てからでも逢おう。今でなくとも。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 3070
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
田上山のさな葛が長く延びて後に絡み合うように、時を経てからでも逢おうと歌う。蔓草の長く延びる性質に、時間をかけて結ばれる仲を重ねている。ここからさな葛を詠む歌が続く。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「木綿畳」は、木綿を畳んで神に手向けることから、「た」の音をもつ「田上」にかかる枕詞である。
二句「田上山の」は、滋賀県大津市の田上山の、の意である。
三句「さな葛」は、蔓草の一種で、蔓が延びて後に絡み合うことから「ありさりて」を導く序詞となる。
四句「ありさりてしも」は、このまま時を経てからでも、の意である。
結句「今ならずとも」は、今でなくとも、の意で、本巻の第三千十八首の結句「今にあらずとも」と同じ趣である。
ゆふたたみ:木綿を畳んだもの、「た」の音の語にかかる枕詞
さなかづら:蔓草の一種、サネカズラ
ありさる:そのまま時を経る
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
赤駒のい行きはばかる真葛原 何の伝て言直にしよけむ
- 次の歌
-
丹波道の大江の山のさな葛 絶えむの心我が思はなくに