古典和歌stream

大崎の荒礒の渡り延ふ葛の
ゆくへもなくや恋ひわたりなむ

歌の意味
大崎の荒磯のあたりに延びる葛のように、行く先もわからないまま恋い続けることになるのだろうか。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3072

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 荒磯に延びる葛の行き先の定まらない姿を序として、行く末もわからないまま恋い続けるのだろうかと嘆く歌である。蔓草を詠む一連の中で、先の見えない恋の不安を述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「大崎の」は、和歌山県の大崎の、の意とされる。
 二句「荒礒の渡り」は、岩の多い荒れた磯のあたり、の意である。
 三句「延ふ葛の」は、延びていく葛のように、の意で、ここまでが蔓の行き先の定まらないことから「ゆくへもなく」を導く序詞となる。
 四句「ゆくへもなくや」は、行く先もわからないまま、の意で、「や」は疑問を表し、結句の連体形「なむ」で結ぶ。
 結句「恋ひわたりなむ」は、恋い続けることになるのだろうか、の意である。

ありそ:岩の多い荒れた磯
くず:葛
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
丹波道の大江の山のさな葛 絶えむの心我が思はなくに
次の歌
木綿包み白月山のさな葛 後もかならず逢はむとぞ思ふ