みさご居る荒礒に生ふるなのりその
よし名は告らじ親は知るとも
- 歌の意味
-
みさごのいる荒磯に生えるなのりそのようには、決して名は告げまい。たとえ親が知ってしまっても。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 3077
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
みさごのいる荒磯のなのりそを序として、決して名は告げまいと、恋を守る強い意志を歌う。前歌が名を告げたのちの歌であるのに対し、こちらは名を告げまいと誓い、二首が対照をなしている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「みさご居る」は、みさごがいる、の意である。
二句「荒礒に生ふる」は、岩の多い磯に生えている、の意である。
三句「なのりその」は、海藻のホンダワラで、ここまでが「名告る」を導く序詞となる。前歌に続いてなのりそを詠み込んでいる。
四句「よし名は告らじ」は、決して名は告げまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。
結句「親は知るとも」は、たとえ親が知ってしまっても、の意で、名を明かさず恋を守る強い意志を示している。
みさご:ワシタカ科の鳥、魚を捕る
なのりそ:海藻のホンダワラ
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
住吉の敷津の浦のなのりその 名は告りてしを逢はなくも怪し
- 次の歌
-
波の共靡く玉藻の片思に 我が思ふ人の言の繁けく