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なかなかに人とあらずは桑子にも
ならましものを玉の緒ばかり

歌の意味
なまじっか人として生きているよりは、いっそ蚕にでもなればよかった。玉の緒のように短い命の間だけでも。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3086

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 なまじ人として恋に苦しむよりは、短い命でも蚕になった方がよかったと歌う。人であることの苦しみを、蚕という小さな生き物への願いで表しているが、解釈には諸説がある。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「なかなかに」は、なまじっか、かえって、の意で、本巻の第二千八百九十九首と同じ初句である。
 二句「人とあらずは」は、人として生きているよりは、の意である。
 三句「桑子にも」は、蚕にでも、の意である。
 四句「ならましものを」は、なればよかったのに、の意で、ここで四句切れとなる。
 結句「玉の緒ばかり」は、玉の緒のように短い命の間だけでも、の意で、前の三首に続いて玉の緒を詠み込んでいる。

くはこ:蚕
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
朝影に我が身はなりぬ玉かぎる ほのかに見えて去にし子ゆゑに
次の歌
ま菅よし宗我の川原に鳴く千鳥 間なし我が背子我が恋ふらくは