- 歌の意味
-
朝の烏よ、早く鳴かないでおくれ。愛しいあの人が明け方に帰っていく姿を見るのは悲しいから。
- 鑑賞
-
巻第十二 寄物陳思 3095
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
夜明けを告げる烏に早く鳴かないでほしいと呼びかけ、明け方に帰っていく恋人の姿を見る悲しさを歌う女の歌である。巻頭の第二千八百四十一首と同じく「我が背子が朝明の姿」の句を用い、後朝の別れの悲しみを歌っている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「朝烏」は、朝に鳴く烏のことである。
二句「早くな鳴きそ」は、早く鳴かないでおくれ、の意で、「な…そ」は禁止を表す。烏の声は夜明けを告げ、男の帰りを促すものであった。ここで二句切れとなる。
三句「我が背子が」は、女が恋しい男を呼ぶ語である。
四句「朝明の姿」は、明け方に帰っていく姿、の意で、三句とともに巻頭の第二千八百四十一首の上二句と同じ句である。
結句「見れば悲しも」は、見ると悲しい、の意である。
あさがらす:朝に鳴く烏
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
物思ふと寐ねず起きたる朝明には わびて鳴くなり庭つ鳥さへ
- 次の歌
-
馬柵越しに麦食む駒の罵らゆれど 猶し恋しく思ひかねつも