我が背子が使を待つと笠も着ず
出でつつぞ見し雨の降らくに
- 歌の意味
-
愛しいあの人からの使いを待とうと、笠もかぶらずに何度も外に出て見たことだ。雨が降っているのに。
- 鑑賞
-
巻第十二 問答歌 3121
詞書は前の歌に続き「問答の歌」
雨の降る中、恋人からの使いを待って、笠もかぶらずに何度も外に出て見たと歌う女の歌である。待ちわびる心が具体的な行動を通して描かれており、次歌と一組の問答をなしている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「我が背子が」は、女が恋しい男を呼ぶ語である。
二句「使を待つと」は、使いを待とうとて、の意である。
三句「笠も着ず」は、笠もかぶらずに、の意である。
四句「出でつつぞ見し」は、何度も外に出て見た、の意で、「ぞ」は連体形「し」で結ぶ。
結句「雨の降らくに」は、雨が降っているのに、の意で、「降らく」は「降る」のク語法である。
かさ:雨や日を防ぐためにかぶるもの
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
今さらに寝めや我が背子新夜の 一夜もおちず夢に見えこそ
- 次の歌
-
心なき雨にもあるか人目守り 乏しき妹に今日だに逢はむを