古典和歌stream

心なき雨にもあるか人目守り
乏しき妹に今日だに逢はむを

歌の意味
思いやりのない雨であることよ。人目をうかがっていて、なかなか逢えないあの子に、せめて今日だけでも逢おうと思っていたのに。
鑑賞
巻第十二 問答歌 3122

詞書は前の歌に続き「問答の歌」
 人目をうかがってなかなか逢えない恋人に、せめて今日だけでも逢おうと思っていたのに、思いやりのない雨だと嘆く男の歌である。前歌の雨の中で待つ女に、雨のために行けなかったと答えている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「心なき」は、思いやりのない、の意である。
 二句「雨にもあるか」は、雨であることよ、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「人目守り」は、人目をうかがって、の意である。
 四句「乏しき妹に」は、めったに逢えないあの子に、の意である。
 結句「今日だに逢はむを」は、せめて今日だけでも逢おうと思っていたのに、の意で、雨に妨げられた無念を示している。

もる:見張る、うかがう
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
我が背子が使を待つと笠も着ず 出でつつぞ見し雨の降らくに
次の歌
ただひとり寝れど寝かねて白栲の 袖を笠に着濡れつつぞ来し