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近くあれば名のみも聞きて慰めつ
今夜ゆ恋のいやまさりなむ

歌の意味
近くにいたので、噂だけでも聞いて心を慰めてきた。今夜からは恋しさがいっそうまさるだろう。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3135

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 近くにいたうちは噂を聞くだけでも心が慰められたが、旅立つ今夜からは恋しさがいっそう募るだろうと歌う。旅立ちによって噂さえ届かなくなる寂しさを予感している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「近くあれば」は、近くにいたので、の意である。
 二句「名のみも聞きて」は、噂だけでも聞いて、の意である。
 三句「慰めつ」は、心を慰めてきた、の意で、ここで三句切れとなる。
 四句「今夜ゆ恋の」は、今夜からは恋しさが、の意で、「ゆ」は起点を表す。
 結句「いやまさりなむ」は、いっそうまさるだろう、の意である。

な:評判、うわさ
なぐさむ:心を慰める
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
里離り遠くあらなくに草枕 旅とし思へばなほ恋ひにけり
次の歌
旅にありて恋ふれば苦しいつしかも 都に行きて君が目を見む