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はしきやししかある恋にもありしかも
君に後れて恋しき思へば

歌の意味
ああいとしい、これほどの恋であったのか。旅立ったあなたに取り残されて、恋しく思ってみると。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3140

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 旅立った男に取り残されて恋しさを味わってみて、これほどの恋であったのかと改めて気づく女の歌である。別れてはじめて知った恋の深さが述べられている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「はしきやし」は、ああいとしい、の意の感動詞的な語である。
 二句「しかある恋にも」は、これほどの恋で、の意で、八音の字余りである。
 三句「ありしかも」は、あったことよ、の意である。
 四句「君に後れて」は、あなたに取り残されて、の意で、旅立った男を見送った女の立場の歌である。
 結句「恋しき思へば」は、恋しく思うと、の意で、仮名の行では「こほしき」と読む。

おくる:取り残される、後に残る
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
玉桙の道に出で立ち別れ来し 日より思ふに忘る時なし
次の歌
草枕旅の悲しくあるなへに 妹を相見て後恋ひむかも