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梓弓末は知らねど愛しみ
君にたぐひて山道越え来ぬ

歌の意味
行く末はわからないけれど、いとしさのあまり、あなたに寄り添って山道を越えてきた。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3149

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 行く末はわからないが、いとしさのあまり男に寄り添って山道を越えてきたと歌う女の歌である。旅に同行する女の、先の見えない不安と一途な思いとが述べられている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「梓弓」は、「末」にかかる枕詞である。
 二句「末は知らねど」は、行く末はわからないけれど、の意で、本巻の第二千九百八十五首の「末はし知らず」と通じる表現である。
 三句「愛しみ」は、いとしく思うので、の意で、仮名の行では「うるはしみ」と読む。
 四句「君にたぐひて」は、あなたに寄り添って、の意で、本巻の第三千十首と同じ句である。
 結句「山道越え来ぬ」は、山道を越えてきた、の意である。

たぐふ:寄り添う、連れ立つ
やまぢ:山道
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
玉釧まき寝し妹を月も経ず 置きてや越えむこの山の崎
次の歌
霞立つ春の長日を奥処なく 知らぬ山道を恋ひつつか来む