古典和歌stream

港廻に満ち来る潮のいや増しに
恋はまされど忘らえぬかも

歌の意味
港のあたりに満ちてくる潮のように、いよいよ恋しさは増していくけれど、忘れることはできないことだ。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3159

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 港に満ちてくる潮のように恋しさは増していくが、それでも忘れることはできないと歌う。満ちてくる潮の比喩で、絶え間なく募る恋の苦しさを表している。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「港廻に」は、港のあたりに、の意である。
 二句「満ち来る潮の」は、満ちてくる潮のように、の意で、ここまでが「いや増しに」を導く序詞となる。
 三句「いや増しに」は、いよいよ増して、の意で、本巻の第二千八百七十二首と同じ語である。
 四句「恋はまされど」は、恋しさは増していくけれど、の意である。
 結句「忘らえぬかも」は、忘れることはできないことだ、の意で、苦しくとも忘れられない恋を表している。

みなとみ:港のあたり
みちく:潮が満ちてくる
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
旅にありてものをぞ思ふ白波の 辺にも沖にも寄るとはなしに
次の歌
沖つ波辺波の来寄る佐太の浦の このさだ過ぎて後恋ひむかも