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沖つ波辺波の来寄る佐太の浦の
このさだ過ぎて後恋ひむかも

歌の意味
沖の波や岸辺の波が寄せてくる佐太の浦の名のように、この時期を過ぎてしまってから、後で恋しく思うことになるだろうか。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3160

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 佐太の浦の名から同音の「さだ」を導き、この時を過ぎてしまえば後で恋しく思うことになるだろうと歌う。旅先で親しんだ人と別れるときの思いを、地名に掛けて述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「沖つ波」は、沖の波、の意である。
 二句「辺波の来寄る」は、岸辺の波が寄せてくる、の意である。
 三句「佐太の浦の」は、佐太の浦の、の意で、六音の字余りである。ここまでが同音の「さだ」を導く序詞となる。本巻の第三千二十九首にも同じ地名が見える。
 四句「このさだ過ぎて」は、この時期を過ぎて、の意で、「さだ」は時、折の意である。
 結句「後恋ひむかも」は、後で恋しく思うことになるだろうか、の意で、本巻の第三千百四十一首と同じ結句である。

へなみ:岸辺に寄せる波
さだ:時、折、時期
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
港廻に満ち来る潮のいや増しに 恋はまされど忘らえぬかも
次の歌
在千潟あり慰めて行かめども 家なる妹いいふかしみせむ