古典和歌stream

在千潟あり慰めて行かめども
家なる妹いいふかしみせむ

歌の意味
在千潟の名のように、こうして心を慰め続けて旅を続けていくけれど、家にいる妻は、気がかりに思っていることだろう。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3161

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 在千潟の名から「あり慰めて」を導き、自分は心を慰めながら旅を続けていくが、家にいる妻は気がかりに思っているだろうと思いやる歌である。旅先の自分と家で待つ妻との心の違いが述べられている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「在千潟」は、所在の明らかでない干潟の名で、「あり」の音から「あり慰めて」を導いている。
 二句「あり慰めて」は、こうして心を慰め続けて、の意である。
 三句「行かめども」は、旅を続けていくけれど、の意である。
 四句「家なる妹い」は、家にいる妻が、の意で、「い」は強意の助詞である。
 結句「いふかしみせむ」は、気がかりに思っていることだろう、の意で、本巻の第三千百六首にも同じ語が見える。

ありなぐさむ:慰め続ける
いふかしむ:気がかりに思う、心が晴れない
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
沖つ波辺波の来寄る佐太の浦の このさだ過ぎて後恋ひむかも
次の歌
みをつくし心尽して思へかも ここにももとな夢にし見ゆる