古典和歌stream

みをつくし心尽して思へかも
ここにももとな夢にし見ゆる

歌の意味
心を尽くして思っているからだろうか、この旅先でも、むやみに夢にあの人が見える。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3162

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 心を尽くして思っているためか、この旅先でもしきりに恋人が夢に見えると歌う。思えば夢に現れるという当時の考え方を背景に、旅先でも絶えない思いを述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「みをつくし」は、船の通る水路を示す杭で、「つくし」の音から「心尽して」を導く枕詞である。
 二句「心尽して」は、心を尽くして、の意である。
 三句「思へかも」は、思っているからだろうか、の意で、「かも」は疑問を表し、結句の連体形「見ゆる」で結ぶ。
 四句「ここにももとな」は、この旅先でも、むやみに、の意である。
 結句「夢にし見ゆる」は、夢に見える、の意で、本巻の第二千九百三十七首と同じ結句である。

みをつくし:船の水路を示す杭、「尽くし」にかかる枕詞
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
在千潟あり慰めて行かめども 家なる妹いいふかしみせむ
次の歌
我妹子に触るとはなしに荒礒廻に 我が衣手は濡れにけるかも