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我妹子に触るとはなしに荒礒廻に
我が衣手は濡れにけるかも

歌の意味
いとしい妻に触れることもないのに、荒磯のあたりで、私の袖は濡れてしまったことだ。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3163

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 妻に触れることもないのに、荒磯のあたりで袖が濡れてしまったと歌う。磯の波に濡れたことに、妻を恋う涙が重ねられている。次歌と同じ結句で結ばれている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「我妹子に」は、いとしい妻に、の意である。
 二句「触るとはなしに」は、触れることもないのに、の意である。
 三句「荒礒廻に」は、荒磯のあたりに、の意である。
 四句「我が衣手は」は、私の袖は、の意である。
 結句「濡れにけるかも」は、濡れてしまったことだ、の意で、磯の波に濡れたことに、妻を恋う涙が重ねられている。

ありそみ:荒磯のあたり
ころもで:袖
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
みをつくし心尽して思へかも ここにももとな夢にし見ゆる
次の歌
室の浦の瀬戸の崎なる鳴島の 礒越す波に濡れにけるかも