波の間ゆ雲居に見ゆる粟島の
逢はぬものゆゑ我に寄そる子ら
- 歌の意味
-
波の間から雲のかなたに見える粟島の名のように、逢いもしないのに、私と仲を噂される娘よ。
- 鑑賞
-
巻第十二 羇旅発思 3167
詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
粟島の名から「逢はぬ」を導き、逢いもしないのに自分と仲を噂される娘のことを歌う。実際には逢っていないのに噂だけが立つことへの戸惑いとも未練ともつかない思いが表れている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「波の間ゆ」は、波の間から、の意である。
二句「雲居に見ゆる」は、雲のかなたに見える、の意である。
三句「粟島の」は、粟島の、の意で、ここまでが「あは」の音から「逢はぬ」を導く序詞となる。
四句「逢はぬものゆゑ」は、逢いもしないのに、の意である。
結句「我に寄そる子ら」は、私と仲を噂される娘よ、の意で、実際には逢ってもいないのに噂だけが立つことを嘆いている。
くもゐ:雲のあるところ、遠く離れたところ
よそる:噂などで関係づけられる
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
我妹子を外のみや見む越の海の 子難の海の島ならなくに
- 次の歌
-
衣手の真若の浦の真砂地 間なく時なし我が恋ふらくは