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漁りする海人の楫音ゆくらかに
妹は心に乗りにけるかも

歌の意味
漁をする海人の楫の音がゆったりと響くように、あの子はゆったりと私の心に乗りかかってしまったことだ。
鑑賞
巻第十二 羇旅発思 3174

詞書は前の歌に続き「羇旅に思ひを発す」
 漁をする海人のゆったりとした楫の音を序として、恋人がゆったりと心に乗りかかって離れないと歌う。のどかな楫の音の比喩が、心を占める恋人の存在を穏やかに伝えている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「漁りする」は、漁をする、の意である。
 二句「海人の楫音」は、海人の楫の音、の意で、ここまでが「ゆくらかに」を導く序詞となる。
 三句「ゆくらかに」は、ゆったりと、の意である。
 四句「妹は心に」は、あの子は私の心に、の意である。
 結句「乗りにけるかも」は、乗りかかってしまったことだ、の意で、恋人が心を占めて離れないことをいう。

かぢおと:楫で舟を漕ぐ音
こころにのる:心を占める、心から離れない
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
松浦舟騒く堀江の水脈早み 楫取る間なく思ほゆるかも
次の歌
和歌の浦に袖さへ濡れて忘れ貝 拾へど妹は忘らえなくに