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うらもなく去にし君ゆゑ朝な朝な
もとなぞ恋ふる逢ふとはなけど

歌の意味
何の思いもないように去っていったあなたのために、毎朝毎朝、むやみに恋しく思う。逢うことはないのだけれど。
鑑賞
巻第十二 悲別歌 3180

詞書「別れを悲しぶる歌」
 何の思いもない様子で去っていった男のために、毎朝むなしく恋い慕う女の歌である。詞書の「別れを悲しぶる歌」は、旅立ちなどによる別れの悲しみを歌う部立であることを示す。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「うらもなく」は、心に何の思いもなく、の意で、本巻の第二千九百六十八首にも同じ語が見える。
 二句「去にし君ゆゑ」は、去っていったあなたのために、の意である。
 三句「朝な朝な」は、毎朝毎朝、の意である。
 四句「もとなぞ恋ふる」は、むやみに恋しく思う、の意で、「ぞ」は連体形「恋ふる」で結ぶ。
 結句「逢ふとはなけど」は、逢うことはないのだけれど、の意で、言いさしの形でむなしさを残している。

うら:心
いぬ:去る、行ってしまう
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
留まりにし人を思ふに秋津野に 居る白雲のやむ時もなし
次の歌
白栲の君が下紐我れさへに 今日結びてな逢はむ日のため