海の底沖は畏し礒廻より
漕ぎ廻みいませ月は経ぬとも
- 歌の意味
-
沖は恐ろしいので、磯のあたりに沿って漕ぎめぐって行ってください。月日がかかってしまっても。
- 鑑賞
-
巻第十二 悲別歌 3199
詞書は前の歌に続き「別れを悲しぶる歌」
沖は恐ろしいので、月日がかかっても磯に沿って漕いで行ってほしいと、船旅に出る男の身を案じる女の歌である。早く帰ってほしいという願いよりも、無事を願う心がまさっている。
作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。
初句「海の底」は、深い海の底の意から、「沖」にかかる枕詞で、仮名の行では「わたのそこ」と読む。
二句「沖は畏し」は、沖は恐ろしい、の意で、ここで二句切れとなる。
三句「礒廻より」は、磯のあたりに沿って、の意である。
四句「漕ぎ廻みいませ」は、漕ぎめぐって行ってください、の意で、ここで四句切れとなる。
結句「月は経ぬとも」は、月日がかかってしまっても、の意で、無事を何よりも願う心を示している。
わたのそこ:海の底、「沖」にかかる枕詞
こぎたむ:漕ぎめぐる
- 作者
-
作者未詳
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
明日よりはいなむの川の出でて去なば 留まれる我れは恋ひつつやあらむ
- 次の歌
-
飼飯の浦に寄する白波しくしくに 妹が姿は思ほゆるかも