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あしひきの片山雉立ち行かむ
君に後れてうつしけめやも

歌の意味
山の片側にいる雉が飛び立つように、旅立っていくあなたに取り残されて、正気でいられようか。
鑑賞
巻第十二 悲別歌 3210

詞書は前の歌に続き「別れを悲しぶる歌」
 雉が飛び立つように旅立っていく相手に取り残されて、正気でいられようかと嘆く女の歌である。悲別歌の部を結ぶ歌で、別れの悲しみが強い反語で述べられている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
 二句「片山雉」は、山の片側にいる雉で、ここまでが雉の飛び立つことから「立ち」を導く序詞となる。
 三句「立ち行かむ」は、旅立っていく、の意である。
 四句「君に後れて」は、あなたに取り残されて、の意で、本巻の第三千百四十首第三千百八十五首と同じ句である。
 結句「うつしけめやも」は、正気でいられようか、の意の反語である。

きぎし:雉
うつし:正気である、しっかりしている
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
春日なる御笠の山に居る雲を 出で見るごとに君をしぞ思ふ
次の歌
玉の緒の現し心や八十楫懸け 漕ぎ出む船に後れて居らむ