ひとりのみ見れば恋しみ神なびの
山の黄葉手折り来り君
- 歌の意味
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私ひとりで見ていては恋しく思われるからと、神なびの山の黄葉を手折って来てくれたのだ、あなたは。
- 鑑賞
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巻第十三 雑歌 3224
詞書「反歌」
長歌(第三千二百二十三首)の反歌である。神なびの山の黄葉をひとりで眺めるのは心残りだと、その枝を手折って持ち帰ってくれた人への喜びと親しみを詠む。長歌では手弱女の「我」が斎槻の黄葉を手折り「君がかざしに」持って行くと歌い、反歌では逆に「君」が黄葉を手折って来たと受ける。贈る側と贈られる側が入れ替わる構図で、宴席で歌い交わされた寿歌とみられる。
作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。
初句「ひとりのみ」は、自分ひとりだけでの意で、美しいものを分かち合う相手を求める気持ちを先に示す。
二句「見れば恋しみ」の「恋しみ」は形容詞「恋し」の語幹に接尾語「み」が付いた形で、「恋しいので」と理由を表す。ここは「こほしみ」と読む。
三句「神なびの」は、神の鎮まる山を示す語で、長歌の「神なびの清き御田屋」と同じ語を反歌でも響かせている。
四句「山の黄葉」は、秋の神山の色づいた葉で、長歌の「秋の黄葉」を受ける。万葉集では「もみち」に「黄葉」の字を当てることが多い。
結句「手折り来り君」の「来り」は「けり」と読み、「来てある」の意で、手折って来たことを確かめる。名詞「君」で止める体言止めで、喜びを相手その人に向けて結ぶ。
かむなび:神が降臨して鎮まる山や森
もみちば:秋に色づいた木の葉
たをる:枝などを手で折り取る
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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豊国の企救の高浜高々に 君待つ夜らはさ夜更けにけり
- 次の歌
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さざれ波浮きて流るる泊瀬川 寄るべき礒のなきが寂しさ