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逢坂をうち出でて見れば近江の海
白木綿花に波立ちわたる

歌の意味
逢坂山を越えて出て眺めると、近江の海には白い木綿の花のように波が一面に立っている。
鑑賞
巻第十三 雑歌 3238

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百三十七首)の反歌である。逢坂山を越えて眼前に開けた琵琶湖の白波を、神事に用いる白木綿の造花にたとえて描く。長歌は或る本の歌で、奈良山を過ぎ宇治川を渡り、逢坂山に手向けをして、妹に逢いたい思いでひとり近江へ向かう道行きを歌う。反歌はその到達点の眺望を鮮やかにとらえ、峠を越えた解放感が伝わる。山部赤人の巻第三の第三百十八首「田子の浦ゆうち出でて見れば」と同じく、視界が開けた瞬間の景を詠む型の歌である。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「逢坂を」は、山城と近江の境の逢坂山で、長歌でも手向けをした峠である。
 二句「うち出でて見れば」の「うち」は接頭語で、勢いよく出ることを表し、峠を越えて急に視界が開ける様子をとらえる。
 三句「近江の海」は琵琶湖のことで、ここで句切れとなり、眼前の景を名指しする。
 四句「白木綿花に」の「白木綿花」は、楮の繊維で作った白い木綿を花の形にしたもので、白波のたとえとして用いる。格助詞「に」は「〜のように」の意である。
 結句「波立ちわたる」は、波が一面に立ち広がるの意で、「わたる」が湖面全体へ広がる大きな景を表す。

しらゆふばな:楮の繊維で作った白い木綿を花に見立てたもの、白波のたとえ
うちいづ:勢いよく外へ出る、峠を越えて視界の開けた所へ出る
たちわたる:一面に立ち広がる
出典
万葉集
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山辺の五十師の御井はおのづから 成れる錦を張れる山かも
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天地を嘆き祈ひ祷み幸くあらば またかへり見む志賀の唐崎