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磯城島の大和の国に人ふたり
ありとし思はば何か嘆かむ

歌の意味
この大和の国に、恋しいあの方のような人がもう一人いると思えるならば、どうしてこれほど嘆くことがあろうか。
鑑賞
巻第十三 相聞 3249

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百四十八首)の反歌である。大和の国に人は多くいても、心を寄せるのはただ一人であり、その人が二人といないからこそ嘆くのだと詠む。長歌は、人は大勢満ちているけれども藤波のように思いがまといつき、若草のように心を寄せた君ゆえに、長いこの夜を恋い明かすのかと嘆く女の歌である。反歌は長歌の「人さはに満ちてあれども」を受け、「人ふたり」と数を絞って思いの一途さを際立たせる。初句二句は長歌の冒頭をそのまま繰り返し、本巻の第三千二百五十四首の「磯城島の大和の国は」とも呼応する。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「磯城島の」は「大和」にかかる枕詞で、崇神天皇や欽明天皇の宮があった磯城の地名に由来する。
 二句「大和の国に」は、日本の国全体を指し、長歌の冒頭と同じ句を反歌で繰り返す。
 三句「人ふたり」は、恋する人と同じような人がもう一人の意で、長歌の「人さはに」と数の多少で対照をなす。
 四句「ありとし思はば」の「し」は強意の副助詞、「思はば」は未然形に「ば」が付いた仮定条件で、「いると思えるならば」の意となる。
 結句「何か嘆かむ」の「か」は反語の係助詞で、結びの「む」が連体形となる係り結びである。「どうして嘆こうか、嘆きはしない」と裏返しの形で思いの深さを示す。

しきしま:大和の国、日本の国をいう語
出典
万葉集
前の歌
天なるや月日のごとく我が思へる 君が日に異に老ゆらく惜しも
次の歌
大船の思ひ頼める君ゆゑに 尽す心は惜しけくもなし