古典和歌stream

しくしくに思はず人はあるらめど
しましくも我は忘らえぬかも

歌の意味
しきりに思ってはくれずに、あの人はいるのだろうけれど、私はほんのしばらくの間も忘れることができないことだ。
鑑賞
巻第十三 相聞 3256

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百五十五首)の反歌である。相手は自分のことを繰り返し思いはしないだろうが、自分は少しの間も忘れられないと、片思いのつらさを詠む。長歌は、昔から恋は苦しいものと言い継がれてきたが、娘子の心を知るすべもなく、命をかけてひそかに恋い続けると歌う。反歌は、相手と自分の思いの差を「しくしく」と「しましく」の音の響き合いで対比させている。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「しくしくに」は、しきりに、繰り返し重ねての意で、相手の思いのあり方を推し量る。
 二句「思はず人は」は、思わずに相手の人はの意で、打消の「ず」が相手の冷淡さを示す。
 三句「あるらめど」の「らめ」は現在推量の助動詞「らむ」の已然形で、「ど」が逆接を表し、「いるのだろうけれど」と下に転じる。
 四句「しましくも我は」の「しましく」は、しばらくの間の意で、初句の「しくしく」と音を響かせ、相手と自分を対比する。
 結句「忘らえぬかも」の「忘らえ」は「忘る」に可能の意の「ゆ」が付いた古い言い方で、「忘れることができないことだ」と詠嘆の「かも」で結ぶ。

わすらゆ:忘れることができる、自然に忘れられる
出典
万葉集
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磯城島の大和の国は言霊の 助くる国ぞま幸くありこそ
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直に来ずこゆ巨勢道から岩せ踏み なづみぞ我が来し恋ひてすべなみ