直に来ずこゆ巨勢道から岩せ踏み
なづみぞ我が来し恋ひてすべなみ
- 歌の意味
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まっすぐには来ないで、ここから巨勢道を通り、岩の多い浅瀬を踏んで、難儀しながら私はやって来た。恋しくてどうしようもないので。
- 鑑賞
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巻第十三 相聞 3257
詞書は前の歌に続き「反歌」
前の反歌に続く一首である。近道をせず巨勢道を回り、岩瀬を踏んで難儀しながらも、恋しさのあまりやって来たと詠む。左注には、或る本ではこの歌を「紀伊の国の浜に寄るといふ鰒玉拾ひにと言ひて行きし君いつ来まさむ」と歌う長歌の反歌としており、詳しくは下に見えるが、古本によってここにも重ねて載せる、とある。本巻の第三千三百二十首はほぼ同じ形の歌で、その長歌(第三千三百十八首)は紀伊へ行った夫を待つ妻の歌である。
作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。
初句「直に来ず」は、まっすぐには来ないでの意で、遠回りの道をとったことを示す。第三千三百二十首では「直に行かず」となっている。
二句「こゆ巨勢道から」の「こゆ」は「ここより」の意、「から」は経由を表し、「ここから巨勢道を通って」の意となる。巨勢は現在の奈良県御所市古瀬のあたりで、紀伊へ向かう道筋にあたる。
三句「岩せ踏み」は、岩の多い浅瀬を踏みの意で、道の険しさを具体的に示す。
四句「なづみぞ我が来し」の「なづむ」は、行き悩む、難儀するの意である。係助詞「ぞ」を受けて、過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びとなる。
結句「恋ひてすべなみ」の「すべなみ」は「すべなし」の語幹に「み」が付いた形で、「恋しくてどうしようもないので」と理由を倒置して添える。
なづむ:行き悩む、難儀しながら進む
いはせ:岩の多い浅瀬
すべ:手段、方法
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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しくしくに思はず人はあるらめど しましくも我は忘らえぬかも
- 次の歌
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かくのみし相思はずあらば天雲の 外にぞ君はあるべくありける