世の中を憂しと思ひて家出せし
我れや何にか還りてならむ
- 歌の意味
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世の中をつらいものと思って家を出てしまった私は、今さら帰ったところで何になれるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 相聞 3265
詞書「或る書の反歌に曰く」
長歌(第三千二百六十三首)について或る書が伝える反歌である。世の中をつらいと思って家を出た身には、今さら帰っても何になることもできないと嘆く。長歌の、思う妹がいるならば国にも家にも行こうという句を、家を捨てた者の側から受けている。前歌が恋の思いを詠むのに対し、本歌は世を厭う心へと視点を移し、出家や遁世を思わせる調子をもつ。
作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。
初句「世の中を」は、人の世、世間を指し、厭わしいものとして示す。
二句「憂しと思ひて」は、つらいと思っての意で、家を出た理由を述べる。
三句「家出せし」は、家を出たの意で、過去の助動詞「き」の連体形「し」が次の「我れ」を修飾する。
四句「我れや何にか」の「や」「か」は疑問や反語の係助詞で、自分の身の行方を問いかける。
結句「還りてならむ」は、帰って何になろうかの意で、「か」の結びとして推量の「む」が連体形となり、帰っても何にもなれないという反語の嘆きで結ぶ。
いへで:家を出ること、家を捨てて出ること
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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年渡るまでにも人はありといふを いつの間にぞも我が恋ひにける
- 次の歌
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明日香川瀬々の玉藻のうち靡き 心は妹に寄りにけるかも