古典和歌stream

ひとり寝る夜を数へむと思へども
恋の繁きに心どもなし

歌の意味
ひとりで寝る夜を数えようと思うけれども、恋しさがしきりなので、しっかりした心もなくなってしまう。
鑑賞
巻第十三 相聞 3275

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百七十四首)の反歌である。ひとり寝の夜を数えようとしても、恋の思いが募ってしっかりした心も失われると詠む。長歌は、朝は門に出て嘆き、夕べは家に入って偲び、衣の袖を折り返してひとり寝る夜は数えきれないと歌う。反歌は長歌の結び「数みもあへむかも」を受け、数えることさえかなわない心の乱れを示す。本巻の挽歌の第三千三百二十九首の後半は、この長歌とほぼ同じ詞句をもつ。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「ひとり寝る」は、ひとりで寝るの意で、共寝のかなわない夜を示す。
 二句「夜を数へむと」は、夜を数えようとの意で、助動詞「む」が意志を表す。長歌の「我が寝る夜らを数みもあへむかも」を受ける。
 三句「思へども」は、思うけれどもの意で、逆接によって願いと現実の食い違いを示す。
 四句「恋の繁きに」の「繁き」は、絶え間なく多いの意で、恋の思いがしきりに募る様をいう。
 結句「心どもなし」の「心ど」は、しっかりした心、心の張りの意で、「も」を添えて、それさえなくなってしまうと嘆いて結ぶ。

こころど:しっかりした心、心の張り
出典
万葉集
前の歌
二つなき恋をしすれば常の帯を 三重結ぶべく我が身はなりぬ
次の歌
寐も寝ずに我が思ふ君はいづくへに 今夜誰れとか待てど来まさぬ