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葦垣の末かき分けて君越ゆと
人にな告げそ事はたな知れ

歌の意味
葦垣の上をかき分けてあなたが越えて来ると、人に告げないでおくれ。事情はよく心得ておいて。
鑑賞
巻第十三 相聞 3279

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百七十八首)の反歌である。葦垣を越えて忍んで来る恋人のことを人に知らせないでほしいと、事情を察するよう頼む。長歌は、床を敷いて待つ君に犬よ吠えるなと呼びかける女の歌で、反歌もその犬に向かって言い聞かせる歌とみられる。人目を忍ぶ恋の緊張を、犬への語りかけというユーモラスな形で描いている。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「葦垣の」は、葦を編んで作った垣根で、粗末な家の囲いを示す。
 二句「末かき分けて」の「末」は垣の上端の意で、それをかき分けて忍び込む恋人の姿を描く。
 三句「君越ゆと」は、あなたが越えて来るとの意で、格助詞「と」が告げる内容を示す。
 四句「人にな告げそ」は、副詞「な」と終助詞「そ」が呼応する禁止の形で、「人に告げるな」と強く頼み、ここで句切れとなる。
 結句「事はたな知れ」の「たな」は、十分に、すっかりの意の接頭語的な語で、「事情はよくわきまえよ」と命令形で結ぶ。

あしかき:葦を編んで作った垣根
たなしる:十分に心得る、よくわきまえる
出典
万葉集
前の歌
寐も寝ずに我が思ふ君はいづくへに 今夜誰れとか待てど来まさぬ
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衣手にあらしの吹きて寒き夜を 君来まさずはひとりかも寝む