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衣手にあらしの吹きて寒き夜を
君来まさずはひとりかも寝む

歌の意味
袖に山おろしの風が吹きつけて寒い夜を、あなたがいらっしゃらないのなら、ひとりで寝ることになるのだろうか。
鑑賞
巻第十三 相聞 3282

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百八十首)とその或る本の歌(第三千二百八十一首)に続く反歌である。袖に嵐が吹きつける寒い夜に、君が来なければひとり寝ることになるのかと嘆く。長歌は、待っても来ない夫を夜更けまで立って待ち、袖に降る雪が凍りつくまで待ったと歌い、夢にだけでも逢いたいと願う。反歌は寒さとひとり寝の寂しさを重ねて凝縮している。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「衣手に」は、袖にの意で、待つ人の身にじかに寒さが及ぶことを示す。
 二句「あらしの吹きて」の「あらし」は山から吹き下ろす激しい風で、原文は「山下」と書く。長歌の「あらしの吹けば」を受ける。
 三句「寒き夜を」は、寒い夜をの意で、格助詞「を」はその夜を過ごすことを示す。
 四句「君来まさずは」の「ずは」は打消の仮定で、「あなたがいらっしゃらないならば」の意である。「来ます」は尊敬語である。
 結句「ひとりかも寝む」の「か」は疑問の係助詞で、「も」が詠嘆を添え、結びの「む」が連体形となる係り結びである。ひとり寝の寂しさを予感して結ぶ。

ころもで:袖
あらし:山から吹き下ろす激しい風
出典
万葉集
前の歌
葦垣の末かき分けて君越ゆと 人にな告げそ事はたな知れ
次の歌
今さらに恋ふとも君に逢はめやも 寝る夜をおちず夢に見えこそ