古典和歌stream

よしゑやし死なむよ我妹生けりとも
かくのみこそ我が恋ひわたりなめ

歌の意味
ええ、ままよ、死んでしまおう、いとしい人よ。生きていても、このように恋い続けるばかりであろうから。
鑑賞
巻第十三 相聞 3298

詞書「反歌」
 長歌(第三千二百九十七首)の反歌である。生きていても恋に苦しみ続けるばかりならば、いっそ死んでしまおうと、思いつめた心を相手に呼びかける。長歌は、昼は一日中、夜は夜通し眠れずに妹を恋い、生きる手立てもないと歌う。反歌は長歌の結び「生けるすべなし」を受けて、死を口にするまでの激しい恋情を示している。
 作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。

 初句「よしゑやし」は、ええ、ままよの意で、どうにでもなれと思い切る気持ちを表す。
 二句「死なむよ我妹」の「む」は意志、「よ」は呼びかけの間投助詞で、「死んでしまおう、いとしい人よ」と相手に直接呼びかけ、ここで句切れとなる。
 三句「生けりとも」は、生きているとしてもの意で、「り」は存続、「とも」は逆接の仮定である。
 四句「かくのみこそ」は、このようにばかりの意で、係助詞「こそ」が結句に係る。字余りの句である。
 結句「恋ひわたりなめ」は、恋い続けることになるだろうの意で、「なめ」は強意の「ぬ」と推量の「む」の已然形であり、「こそ」の結びとなる係り結びである。

わぎも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
こひわたる:恋い続ける
出典
万葉集
前の歌
父母に知らせぬ子ゆゑ三宅道の 夏野の草をなづみ来るかも
次の歌
聞かずして黙もあらましを何しかも 君が直香を人の告げつる