聞かずして黙もあらましを何しかも
君が直香を人の告げつる
- 歌の意味
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聞かないで黙っていればよかったのに、どうしてあの方の様子を人は告げたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 相聞 3304
詞書「反歌」
長歌(第三千三百三首)の反歌である。夫の消息を知らずに黙っていればよかったのに、なぜ人はその様子を告げたのかと嘆く。長歌は、里人が、汝が恋うる夫は黄葉の散り乱れる神なびの山辺から黒馬に乗り、川の瀬を七瀬渡って、しょんぼりとした様子で人に逢っていたと告げたと歌うもので、夫がほかの女のもとへ通う姿を伝えた歌とも、亡くなった夫の霊を見たという挽歌風の歌とも解される。反歌は知らせを聞いた後の苦しみを率直に述べる。
作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。
初句「聞かずして」は、聞かないでの意で、知らせを受けたことを悔やむ気持ちを先に示す。
二句「黙もあらましを」の「黙」は黙っていることで、「まし」は反実仮想の助動詞、「を」は逆接の詠嘆を表し、「黙っていられたものを」の意となる。ここで句切れとなる。
三句「何しかも」は、どうしての意で、「し」は強意、「か」は疑問の係助詞で結句の連体形に係る。
四句「君が直香を」の「直香」は、その人の様子やありさまの意で、夫の姿をじかに伝える言葉を指す。
結句「人の告げつる」は、人が告げたのかの意で、「か」の結びとして完了の「つ」が連体形「つる」となる係り結びである。
もだ:黙っていること
ただか:その人の様子、ありさま、その人自身
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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よしゑやし死なむよ我妹生けりとも かくのみこそ我が恋ひわたりなめ
- 次の歌
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いかにして恋やむものぞ天地の 神を祈れど我れは思ひ増す