川の瀬の石踏み渡りぬばたまの
黒馬来る夜は常にあらぬかも
- 歌の意味
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川の瀬の石を踏み渡って、黒馬に乗ってあなたが来る夜は、いつもあってくれないものだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 問答 3313
詞書「反歌」
女の答えの長歌(第三千三百十二首)の反歌である。川の瀬の石を踏み渡り、黒馬で通って来る夜がいつもであってほしいと願う。長歌は、泊瀬の小国に妻問いに来た天皇に、奥の床には母が、外の床には父が寝ていて、起きれば母が、出て行けば父が気づくから思うようにならないと答える女の歌である。反歌は今夜は応じられなくとも、通いが続くことを望む心を示す。本巻の第三千三百三首の長歌にも「ぬばたまの黒馬に乗りて川の瀬を七瀬渡りて」とあり、黒馬で川を渡って通う夫の姿が共通して詠まれている。
作者は未詳である。巻第十三は作者名を記さない長歌とその反歌を中心に編まれた巻で、古い歌謡や儀礼の歌の面影を伝える歌が多い。
初句「川の瀬の」は、川の浅瀬のの意で、通い路にある川を示す。
二句「石踏み渡り」は、石を踏んで渡っての意で、男の反歌(第三千三百十一首)の「石は踏めども」に応じる。
三句「ぬばたまの」は、ぬばたまの実が黒いことから「黒」にかかる枕詞である。
四句「黒馬来る夜は」は、黒馬に乗ってあなたが来る夜はの意で、男が乗る馬によって通いを表す。
結句「常にあらぬかも」の「ぬかも」は打消の「ず」に「かも」が付いた形で、「いつもあってくれないものか」と願望を表して結ぶ。字余りの句である。
くろま:黒い毛の馬
ぬばたま:ヒオウギの黒い実、黒や夜を導く語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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隠口の泊瀬小国に妻しあれば 石は踏めどもなほし来にけり
- 次の歌
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泉川渡り瀬深み我が背子が 旅行き衣ひづちなむかも