筑波嶺に雪かも降らるいなをかも
愛しき子ろが布乾さるかも
- 歌の意味
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筑波山に雪が降ったのだろうか。いや、違うのだろうか。いとしいあの子が布を干しているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十四 東歌 3351
詞書は前の歌に続き「東歌」
筑波山に白く見えるものを、雪か、それとも恋しい娘が干した布かと見まがう歌である。山の白さに愛する人の働く姿を重ね、遠くからでも相手を思う心が明るい調子でうたわれている。
左注に「右二首常陸国歌」とあり、前歌とともに常陸国の歌とされる。白い布を雪に見立てる発想は、巻一の持統天皇の「白妙の衣干したり天の香具山」とも通い合う。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「筑波嶺に」は前歌と同じく筑波山で、「筑波嶺の」に対して「筑波嶺に」と場所を示す助詞で始まる。
二句「雪かも降らる」の「かも」は疑問、「降らる」は「降れる」の東国方言である。まず雪かと問いかける。
三句「いなをかも」は「いや、そうではないのか」と自問する語である。疑問をいったん打ち消して、別の見立てへと転じる要となる句である。
四句「愛しき子ろが」の「子ろ」の「ろ」は親しみを表す東国方言の接尾語である。「愛しき」はいとしいの意で、恋しい娘への情がこもる。
結句「布乾さるかも」の「布」は「にの」と訓む東国方言で、「乾さる」も「乾せる」の方言形である。「かも」を重ねて、雪と布の二つの見立てを並べて結ぶ。
ふらる:「降れる」の東国方言
にの:布の東国方言
ほさる:「乾せる」の東国方言で、干している
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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筑波嶺の新桑繭の衣はあれど 君が御衣しあやに着欲しも
- 次の歌
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信濃なる須我の荒野に霍公鳥 鳴く声聞けば時過ぎにけり