あらたまの伎倍の林に汝を立てて
行きかつましじ寐を先立たね
- 歌の意味
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伎倍の林にお前を立たせたままでは、とても行くことはできないだろう。さあ、まず共寝をしよう。
- 鑑賞
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巻第十四 東歌 3353
詞書「相聞」
伎倍の林に恋人を立たせたまま別れて行くことはできない、まずは共に寝ようと誘う歌である。別れ際のためらいと率直な欲求が、方言をまじえた力強い調子で表されている。
本歌から相聞の部に入る。左注に「右二首遠江国歌」とあり、次歌とともに遠江国(現在の静岡県西部)の歌とされる。伎倍は浜松市付近の地名とされ、歌垣などの場でうたわれた民謡とみる説もある。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「あらたまの」は「年」や地名「麁玉(あらたま)」にかかる枕詞である。ここでは遠江国麁玉郡の地名とかかわって「伎倍」を導く。
二句「伎倍の林に」は遠江国の地名で、そこにある林をいう。次歌も「伎倍人の」と同じ地名で始まり、二首が一組となる。
三句「汝を立てて」の「汝」は相手を親しんで呼ぶ語で、「立てて」は立たせたままにしての意である。
四句「行きかつましじ」の「かつ」は「できる」の意、「ましじ」は打消推量の助動詞で、とても行けないだろうという。四句切れである。
結句「寐を先立たね」の「寐」は眠ること、共寝をいい、「ね」は願望の終助詞である。別れより先に共寝を、という結びが一首の訴えである。
あらたまの:「年」や地名「あらたま」にかかる枕詞
きへ:遠江国の地名。現在の浜松市付近とされる
い:眠ること、共寝
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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信濃なる須我の荒野に霍公鳥 鳴く声聞けば時過ぎにけり
- 次の歌
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伎倍人のまだら衾に綿さはだ 入りなましもの妹が小床に