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妹が門いや遠そきぬ筑波山
隠れぬほとに袖は振りてな

歌の意味
いとしい人の家の門はいよいよ遠ざかってしまった。筑波山に隠れてしまわないうちに、袖を振っておこう。
鑑賞
巻第十四 東歌 3389

詞書は前の歌に続き「相聞」
 旅立ちのあと、恋人の家の門がしだいに遠ざかり、筑波山の陰に隠れてしまう前に袖を振って別れを告げようという歌である。振り返りながら遠ざかる旅人の名残惜しさが、山の姿とともに描かれている。
 常陸国歌の一首である。袖を振るのは別れの際に魂を招き寄せる呪術的な意味をもつしぐさとされ、万葉集にしばしば詠まれる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「妹が門」は恋人の家の門をいう。旅立つ者が振り返る視点から始まる。
 二句「いや遠そきぬ」の「そく」は遠ざかる意で、「ぬ」は完了である。二句切れとなる。
 三句「筑波山」は前歌の「筑波嶺」に続いて筑波山を詠む。ここでは門を隠すものとして現れる。
 四句「隠れぬほとに」の「ほと」は「ほど」の東国方言で、隠れないうちにの意である。
 結句「袖は振りてな」の「てな」は完了と意志を表し、袖を振っておこうと結ぶ。

そく:遠ざかる
ほと:「ほど」の東国方言で、うち、間
出典
万葉集
前の歌
筑波嶺の嶺ろに霞居過ぎかてに 息づく君を率寝て遣らさね
次の歌
筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか 泣きわたりなむ逢ふとはなしに