筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか
泣きわたりなむ逢ふとはなしに
- 歌の意味
-
筑波山でかかと鳴く鷲のように、声をあげて泣き続けるばかりなのだろうか。逢うこともないままに。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3390
詞書は前の歌に続き「相聞」
筑波山で鋭く鳴く鷲のように、逢うこともないまま声をあげて泣き続けるのだろうかと嘆く歌である。山に響く鷲の声が、満たされない恋の悲しみを大きく響かせている。
常陸国歌の一首である。筑波山に鷲が住んでいたことは、巻九の高橋虫麻呂の筑波山の歌垣の長歌にも「鷲の住む筑波の山」と詠まれている。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「筑波嶺に」は筑波山で、常陸国歌の筑波山の歌が続く。
二句「かか鳴く鷲の」の「かか」は鷲の鳴き声を表す擬声語である。初句と二句が「音」を導く序詞となる。
三句「音のみをか」の「音」は声、泣き声で、「か」は疑問の係助詞である。結句の前の「む」と呼応する。
四句「泣きわたりなむ」の「わたる」は時を経て続ける意で、「なむ」は係助詞「か」の結びとなる推量である。
結句「逢ふとはなしに」は逢うこともなくの意で、倒置によって泣き続ける理由を最後に示す。
かか:鷲の鳴き声
なきわたる:泣き続ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
妹が門いや遠そきぬ筑波山 隠れぬほとに袖は振りてな
- 次の歌
-
筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山 悪しかるとがもさね見えなくに