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筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山
悪しかるとがもさね見えなくに

歌の意味
筑波山の背後に見える葦穂山の名のように、あの人には悪いところなど少しも見えないのに。
鑑賞
巻第十四 東歌 3391

詞書は前の歌に続き「相聞」
 筑波山の背後に見える葦穂山の名から「悪し」を引き出し、恋しい人には悪いところなど少しも見えないとうたう歌である。人が二人の仲を悪く言うことへの反発とも読まれる。
 常陸国歌の一首である。葦穂山は筑波山の北にある足尾山で、現在の茨城県石岡市、桜川市にまたがる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「筑波嶺に」は筑波山で、ここでは葦穂山の位置を示す基準となる。
 二句「そがひに見ゆる」の「そがひ」は背後、後ろの方向の意である。
 三句「葦穂山」は足尾山で、「あし」の音から「悪し」を導く。初句からここまでが序詞である。
 四句「悪しかるとがも」の「とが」は欠点、過ちで、「悪しかる」と並べて悪いところをいう。
 結句「さね見えなくに」の「さね」は少しも、決しての意で、打消と呼応する。「なくに」は打消の詠嘆である。

そがひ:背後、後ろの方向
あしほやま:筑波山の北にある足尾山
とが:欠点、過ち
出典
万葉集
前の歌
筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか 泣きわたりなむ逢ふとはなしに
次の歌
筑波嶺の岩もとどろに落つる水 よにもたゆらに我が思はなくに