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筑波嶺の岩もとどろに落つる水
よにもたゆらに我が思はなくに

歌の意味
筑波山の岩もとどろくほどに激しく落ちる水のように、決していいかげんな気持ちで私は思っているのではないのに。
鑑賞
巻第十四 東歌 3392

詞書は前の歌に続き「相聞」
 筑波山の岩にとどろいて落ちる激しい水のように、自分の思いは決してゆらいだいいかげんなものではないと訴える歌である。激流の力強さが、恋心のひたむきさと重なっている。
 常陸国歌の一首である。相模国歌の第三千三百六十八首「よにもたよらに子ろが言はなくに」と下の句がよく似ており、同じ型の言い回しが各地で用いられたことがわかる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「筑波嶺の」は筑波山で、常陸国歌の筑波山の歌が続く。
 二句「岩もとどろに」の「とどろに」は鳴り響くさまで、岩に当たって激しく響く水音をいう。
 三句「落つる水」は激しく落ちる水で、初句からここまでがそれと反対の「たゆら」を導く序詞となる。
 四句「よにもたゆらに」の「たゆら」は揺れ動いて定まらないさまで、第三千三百六十八首の「たよら」と同じ語である。
 結句「我が思はなくに」の「なくに」は打消の詠嘆で、思っていないのにと訴えて結ぶ。

たゆら:揺れ動いて定まらないさま
出典
万葉集
前の歌
筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山 悪しかるとがもさね見えなくに
次の歌
筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ 母い守れども魂ぞ会ひにける