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上つ毛野乎度の多杼里が川路にも
子らは逢はなもひとりのみして

歌の意味
上野の乎度の多杼里の川沿いの道ででも、あの子が逢ってくれたらいいのに。ひとりだけで。
鑑賞
巻第十四 東歌 3405

詞書は前の歌に続き「相聞」
 上野の乎度の多杼里の川沿いの道ででもよいから、恋人が一人で来て逢ってくれたらと願う歌である。人目のない場所で二人きりになりたいという思いが素直に表されている。
 左注に或本の歌として「上つ毛野小野の多杼里があはぢにも背なは逢はなも見る人なしに」を記す。或本では女性の立場から男に逢いたいと願う歌になっている。上野国歌の一首である。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「上つ毛野」は上野国の古名で、前歌と同じ初句である。
 二句「乎度の多杼里が」の「乎度」と「多杼里」は地名とされるが、所在は未詳である。
 三句「川路にも」は川に沿った道で、「にも」はでもよいからの意である。
 四句「子らは逢はなも」の「なも」は願望の東国方言で、逢ってほしいの意である。
 結句「ひとりのみして」はひとりだけでの意で、人目のないことを願って結ぶ。

かはぢ:川に沿った道
なも:願望を表す東国方言
出典
万葉集
前の歌
上つ毛野安蘇のま麻むらかき抱き 寝れど飽かぬをあどか我がせむ
次の歌
上つ毛野佐野の茎立ち折りはやし 我れは待たむゑ来とし来ずとも