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上つ毛野佐野の茎立ち折りはやし
我れは待たむゑ来とし来ずとも

歌の意味
上野の佐野の菜の茎を折って料理し、私は待っていよう。たとえあなたが今年は来ないとしても。
鑑賞
巻第十四 東歌 3406

詞書は前の歌に続き「相聞」
 佐野の菜の若い茎を折って料理を整え、恋人の訪れを待とう、たとえ来なくてもとうたう女性の歌である。来ないかもしれない相手をなお待つ健気な心が、食事の支度という日常の行為で表されている。
 上野国歌の一首である。佐野は上野国の地名で、現在の群馬県高崎市佐野付近とされる。結句の「来とし」を「今年」と解する説もある。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「上つ毛野」は上野国の古名で、上野国歌の多くがこの初句で始まる。
 二句「佐野の茎立ち」の「茎立ち」は菜の花茎で、春の若い茎をいう。本巻の第三千四百十八首、第三千四百二十首にも佐野の地名が詠まれる。
 三句「折りはやし」の「はやし」は料理するの意とされる。
 四句「我れは待たむゑ」の「ゑ」は詠嘆の終助詞である。四句切れである。
 結句「来とし来ずとも」の「来とし」は来ようとの意とする説と「今年」とする説がある。「ずとも」は逆接仮定である。

くくたち:菜の花茎
をりはやす:折って料理する意とされる
出典
万葉集
前の歌
上つ毛野乎度の多杼里が川路にも 子らは逢はなもひとりのみして
次の歌
上つ毛野まぐはしまとに朝日さし まきらはしもなありつつ見れば