伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく
人とおたはふいざ寝しめとら
- 歌の意味
-
伊香保の山に空の雲が次々にかかって雷が鳴り響くように、人が騒ぎ立てている。さあ、寝させておくれ。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3409
詞書は前の歌に続き「相聞」
伊香保の山に雲が重なって雷が鳴るように、世間の人々が騒ぎ立てているが、かまわず共寝をしようと誘う歌である。難解な語句が多いが、噂を恐れぬ大胆な恋の歌と解されている。
上野国歌の一首である。本巻の第三千五百十八首に「岩の上にいかかる雲のかのまづく人ぞおたはふいざ寝しめとら」という下の句がほぼ同じ歌があり、同じ民謡の異なる形とみられる。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「伊香保ろに」は上野国の伊香保で、榛名山一帯をさすとされる。「ろ」は接尾語である。本巻では伊香保を詠む歌が多い。
二句「天雲い継ぎ」の「い」は接頭語、「継ぎ」は雲が次々に重なることをいう。
三句「かぬまづく」は難解な語で、雷が鳴る意とする説、沼地の意とする説などがある。
四句「人とおたはふ」の「おたはふ」は騒ぎ立てる意とされる。人々の噂をいう。
結句「いざ寝しめとら」の「しめ」は使役、「とら」は難解だが呼びかけの語とされる。さあ寝ようと誘って結ぶ。
かぬまづく:難解な語で、雷が鳴る意とする説がある
おたはふ:騒ぎ立てる意とされる
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
新田山嶺にはつかなな我に寄そり はしなる子らしあやに愛しも
- 次の歌
-
伊香保ろの沿ひの榛原ねもころに 奥をなかねそまさかしよかば