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上つ毛野伊香保の沼に植ゑ小水葱
かく恋ひむとや種求めけむ

歌の意味
上野の伊香保の沼に植えた小水葱。こんなに恋に苦しむと思って、その種を求めたのだろうか。
鑑賞
巻第十四 東歌 3415

詞書は前の歌に続き「相聞」
 伊香保の沼に植えた小水葱のように、自分から求めて始めた恋が、これほど苦しいものになるとは思わなかったと嘆く歌である。種を求めることを恋のきっかけに重ね、恋の始まりを省みる心が表されている。
 上野国歌の一首である。小水葱は水辺に生える草で、食用にされた。本巻の第三千五百七十六首にも「苗代の小水葱が花」が詠まれる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「上つ毛野」は上野国の古名で、上野国歌の一首として始まる。
 二句「伊香保の沼に」は伊香保の沼で、伊香保の歌が続く。
 三句「植ゑ小水葱」の「小水葱」は水辺に生える草で、名詞で切れる三句切れである。
 四句「かく恋ひむとや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「けむ」と呼応する。
 結句「種求めけむ」の「けむ」は過去推量で、種を求めたのだろうかと過去を省みて結ぶ。

こなぎ:水辺に生える草。食用とされた
出典
万葉集
前の歌
伊香保ろのやさかのゐでに立つ虹の 現はろまでもさ寝をさ寝てば
次の歌
上つ毛野可保夜が沼のいはゐつら 引かばぬれつつ我をな絶えそね